シャラク30周年記念写真展の開催、お喜び申しあげます。
昨今はカメラ付き携帯電話の発達で誰でもたやすく自分の体験、想い出を鮮明に映像化できる時代になりました。
デジタル時代の象徴のようなこのツールは技術的にも驚くばかりの進歩を遂げており、現代生活の中では不可欠なものとなっています。
思えばこの世の中がLPレコードからCDになりレコードプレイヤーがなくなった時、デジタルカメラ登場でフィルムカメラが少なくなった時、
昭和生まれの人間は何かを失ったような気持ちになりました。
レコード盤に針をおく動作がなくなり、フィルム現像と言う手間がいらなくなった時、便利だと手放しで喜べなかったことを覚えています。
しかし時代は進んでいきます。
私も幾度か経験がありますが、デジタルであろうがアナログであろうが素晴らしいカメラマンに撮ってもらった時、
その表情のとらえ方、光の取り入れ方などに感心した経験が数多くあります。
私はカメラが趣味だとは言えませんが、ファインダーを覗いて一瞬のタイミングで納得のいく写真が撮れた時の喜びは想像できます。
それはまるで自分で書いた譜面を演奏家が見事に再現してくれた時の快感に似ているかもしれません。
道具はなんであれ自分の感性に忠実に再現できた作品は自分にとって何よりも価値のあるものです。
それが文化・芸術の創造の基本ではないでしょうか。
この30周年写真展の成功と、写真を長年の趣味としてお集まりのシャラクの皆さまの益々のご健勝、発展を心から祈念いたします。
令和五年二月吉日
作曲家・文化庁長官 都倉 俊一